今回はけんすう(@kensuu)氏より調査依頼を頂き、国内外のプラットフォーマーが提供するプライベートブランドを分析した。今後、datavase.ioでは【リクエストレポート】と称し依頼された調査レポートを連載する。
今日のコンビニを見てみると、飲食物のコーナーにはプライベートブランドの商品が一際目立って並んでいる。これは数年前には見られなかった光景で、今もなおコンビニ(プラットフォーマー)が独自で商品開発された品物数は増加傾向にある。ユーザーに対して接点をもつプラットフォーマーがプライベートブランドを開発し販売することで営業利益の成長を見込めることは言うまでもない。
俯瞰的に見てみると、これはネット界隈にも通づる話であり、Amazon, Netfilix, Youtube, Newspicksと当初はプラットフォーマーでしかなかったサービスが独自ブランドのコンテンツ(品物や動画)を作り、既存産業を置き換える流れが見て取れる。
商品を製造する*メーカーによるブランドであるナショナルブランド(NB)に対し、小売業者や卸業者などが開発したブランドはプライベートブランド(PB)**と呼ばれる。
PB商品の例としては、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで見かける独自商品が馴染み深いかもしれない。
一般に、PBはNBの廉価商品というようなイメージが強いかと思われるが、近年PBの商品展開の幅は大きく広がってきており、あらゆるジャンルにおいて様々な商品が販売されているのみならず、NBに対するPB商品の位置付けも変化してきているのだ。
今回は米国および日本においてどのようなPB商品がどんな企業(プラットフォーム)によって販売されているのかを調査した。
1.食品系
2.食料品・日用雑貨など
3.衣料・アパレル系
4.医薬品・化粧品等
5.その他
6.まとめ
まずPB商品としてよく目にするのが食料品だ。食品系の主要PBとしては上記のブランドが挙げられる。ここでは、特に生活雑貨類等を含まない、主に食品のみを扱うPBをリストアップしてみた。比較的歴史の浅いPBが多いが、多くのPBには各々コンセプトがあり、独自ブランドのこだわりを打ち出しているところが特徴と言えるだろう。
例えば、近年販売品目を拡大してきているAmazonのHappy Bellyは、「おなかを幸せに、食卓に笑顔を」をコンセプトに、厳選された水源から採取した天然水や、酸味料・保存料等を一切使用せずに無菌化した特別栽培米など、こだわりを持った独自商品を販売している。
画像:同社webサイトより転載
また、多くの企業が一種のPBのみを展開するのに対して、専門スーパーのバローは、商品のコンセプトによって異なるブランド名をもつPBを展開している。具体的には、「良品廉価」の商品を揃えたV select、美味しさ、製法、素材にこだわったV quality、厳選した製法、素材のみを用いたV premiumとそれぞれ異なるコンセプトを持った商品ラインナップを揃えている。敢えて自社製品を3つのブランドに分けることにより、より各PBのメッセージ性が強調されている印象だ。
画像:同社webサイトより転載
食品のみならず日用雑貨までラインナップを広げたPBも多く見受けられる。
特に多種の商品を扱うコンビニエンスストアなどは、独自ブランドをジャンル問わずに幅広く展開している。しかし、米国のWalmartやCostocoが1990年代からいち早くPB展開を開始してきたのに対して、日本のコンビニエンスストアのPB商品が発達してきたのはここ10年前後のことなのである。
同カテゴリのPB商品は、基幹となるコンセプトを持ちながらも販売商品のジャンルに制限が見られず、PBであるということが明らかな場合が多い。例えばセブン&アイのセブンプレミアムは食品から消耗品、衣類までPBを幅広く展開しているが、商品のロゴ等は統一されており、製品ジャンル・コンセプトごとの差別化は見られない。
画像:同社webサイトより転載
衣料・アパレル系のPBを調査したところ、本ジャンルに限って商品を展開しているPBは少ない事がわかった。(食品・生活雑貨等を含むPB商品ラインナップの一部として衣料・アパレルを販売するPBは多くあるが...)
一方で、Amazonは同分野に複数のPB展開をしているのみならず、ターゲット層やコンセプトが確立されており各々が一つのブランドとして自立しているようだ。ブランド名に関しても、Amazonを連想させないネーミングが多いことも注目すべきだろう。本章以前にご紹介したPBは、マルエツが展開する「maruetsu365」、CGCの「CGC」など、ブランド名がそのまま企業名に繋がるものが多かった。
これは、消費者が食品や日用雑貨に求めるものと衣料・アパレルに消費者が求めるものに差があることを表している。食品や日用雑貨には、安さや使い勝手のよさ、美味しさを求め、自分の家の中で使用するものが多いため、人とルックスをシェアすることは少ない。一方で、衣料・アパレルはセンスが求められる。そのため、外見やブランド名もAmazonという名前よりもより各々のブランドテイストに合った、より凝ったタイトルがつけられている。
また、同分野における細かい商品の棲み分けを見ても、他企業に比べてAmazonは各PBのブランディンングに力を入れていることが想像できるだろう。
画像:同社webサイトより転載
画像:同社webサイトより転載
画像:同社webサイトより転載
医薬品や化粧品のPBも数多く存在する。CVS、マツキヨなどのドラッグストアが独自の医薬品・化粧品ブランドの展開を進める一方で、Amazonやイオンなどの同分野を専門としない業態の企業も同カテゴリに進出している点は特筆すべきかもしれない。
また、CVSは異なるコンセプトのPBを数多く展開しているが、CVSの名前を謳った商品以外にもあるジャンルに特化した異なる名前のPBを複数有しており、特に化粧品ブランド等にはPB商品にそれと分からせないようなネーミングおよびパッケージングを施しているようにも伺える。
)
画像:同社webサイトより転載
ここまで、大きく主要カテゴリ別にPBを見てきたが、この他のジャンルの商品を展開するPBももちろん数多く存在する。
特にジャンルを問わずに商品展開がなされているPBも多い一方で、多角的なPB展開をするAmazonが寝具、家電・テック系、ベビー用品、ペット用品など、さらに細かいジャンルに特化したPBを個別に展開している点は注目すべきであり、独自商品としてのPBという枠を超えたPBのブランディングが鍵となっているように見受けられる。
以下サブスクリプションしていただきましたユーザー様向けに、同分析まとめとPB分析をする際にまとめたシートのダウンロードリンクを添付致します。